ありがとう 温泉

温泉の医学的利用については、温泉水としての効果、含まれている成分による効用、温泉地としての環境の影響などかなり詳しく調べられていますが、温泉の効きめは、温泉水と、その温泉のある地域、環境などの総合効果で単に温泉だけのものではないのです。

 

古い時代は宗教上のみそぎとして自然に湧いている温泉を見つけて利用していましたが、次第に儀式から離れ湯治に変わっていきました。

農、漁民の間では湯治として年間を通じて色々と名をつけて行われるようになったのです。

正月の湯、寒の湯から始まり、春湯治、田植え前の湯、さなぶり湯、野上りの湯、一番草後の炮{あぶり}落しの湯、丑湯治、取り入れ前の湯、刈り入れ後の湯、さらに秋湯治、冬湯治とほとんど全季節にわたって行われるようになりました。

温泉療法の基本的な考え

温泉療法といえば、温泉に浸かったり、飲むだけとおもわれがちです。例えば、温泉水を運んで自宅で利用したり、入浴剤や湯の花を入れて温泉の効果を求めようとしますが、これは全く効果が無いとはいえませんが、療法としての効果は温泉浴、飲泉だけでなく温泉地のもつあらゆる条件{環境、高地、海浜、森林地帯、峡谷、気圧、湿度、気候}と食事の注意、転地の効果などを含んだ総合的な効果を言うのです。

簡単に言えば温泉療法とは温泉地療法なのです。

温泉利用の三養 休養 保養 療養

休養とは、温泉に行って疲労を取り除きリラックスすること。

保養とは、健康を増進し、疾病の予防や心身をリフレッシュすること。

療養とは、温泉を病気の治療、病後の回復、リハビリテーションの手段として利用することといえるでしょう。

 

温泉の作用について

1 温熱作用 

37〜39度の微温浴は人体に鎮静的に働き、ゆったりと長く入浴する事で温泉成分の体への取り込みが増え、高血圧、心疾患、脳卒中後遺症、ノイローゼ、不眠、心身症などに効果があります。

一方40〜43度の高温浴は人体に興奮的刺激的に作用し、痛みに対しての沈痛効果が大きく神経痛、リュウマチ、腰痛、五十肩に効果があり、高温、低温{水道水でも良い}と交互に入る交代浴は、四肢抹消の循環障害に対しても有効です。

又、入浴は運動するのと同じようにカロリーを消費するので、肥満や糖尿病に対する効果に対しても最近特に注目されています。

2 物理的作用{水圧 浮力 水の抵抗}

ただ単に入浴するだけでなく、浴槽内での浮力を 利用し痛い部分をもみほぐしたり関節を無理の無い程度に曲げたりして、空中では出 来ない運動が可能になります。

3 科学的作用{含有成分の作用}

温泉に入ると含有物質が体内に入り生体に影響を与えますが、含有 物質の薬理作用でその温泉の適応症が決まります。

湯あたり

温泉浴をいきなり一日四、五回以上、二、三日続けると体内に入った含有物質が生体に影響を与え、だるさ、食欲不振、便秘、睡眠の異常、めまい、頭痛、皮膚の湯ただれなどの変調作用があらわれます。

これらは自律神経の一過性の変調によるもので、一種の温泉の効果と見て経過を見、そのまま続けてもほとんどの場合良くなりますが、ひどい時は入浴回数を減らします。

湯治の期間と一日の入浴回数

一〜二週間位が良いとされています。一〜二日位では温泉療法としての効果はあまり望めませんが、一泊二日型の温泉旅行は別の意味での効果が期待できます。

入浴回数は、はじめ一、二回と少な目にして滞在期間中の中頃を三、四回と多くし、帰りが近づくに従い回数を減らします。

酒を飲んでの入浴や、一日五、六回も入いるなどはきわめて危険です。

入浴の時刻と入浴時間

原則的には食事時間に遠い時刻がよいとされています。

極端な空腹、満腹時には入らない事。就寝前はぬるめのお湯が鎮静催眠効果があり、あつめのお湯は朝湯におすすめです。

入浴前はカブリ湯を充分行ってください。三〜五分湯に浸かり出浴、同じ時間くらい休息し、又三〜五分くらい浸かります。

これを何回か繰り返し、実際に浸かっている時間の合計を二十〜三十分にして上がり、浴場外で三十分くらい休息を取って終わります。

尚、時間の区分は無理にならないよう適当に変えても結構です。

その他の注意

高血圧、心臓病、動脈硬化など循環器障害を持った中高年は、入浴前に心臓から遠い手足から充分にかけ湯をして、体を温泉に馴らしてから入ってください。

じっくり、ゆったり、いい湯を楽しんで、

一日も早く良くなるようお祈りします。

 

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