祥雲寺の金蛇様
[白糸の滝に行く途中にあるお寺です]
昔々、大口村の多くが畑仕事に精を出し、お蚕様をそれはそれは大事に育てていました。
お蚕様は、チュウチュウねずみが大嫌い。
ある年、いつもよりねずみが増え、大事に手を掛けたお蚕様が、ほとんどねずみのおなかに消えてしまったのです。
困り果てた村人たちが、寺の和尚さんに相談したところ「それは困ったことじゃ。」
しばらく思案した和尚さん「うちの金蛇様をお蚕様の傍においてみてはどうじゃろう。」
その日のうちに金蛇様をお借りして、村人たちが順番に蚕部屋に置いてみたところ、ねずみはちっとも姿を見せず、すくすく育ったお
蚕様に村人たちは大いに喜んだということです。
この金蛇様、その昔京に住む“三条小鍛冶宗近”という刀鍛冶の作品で、祥雲寺のお宝として今なお秘蔵されています。
白糸の滝の大蛇
金蛇様の噂が村中にひろがったある日のこと。
「そんなに効き目があるのなら、うちだけに置いてよその家には回すものか」と、独り占めを考えた欲張りな村人がおりました。
「しめしめ、今宵はつきも出ず、寺へ忍び込むにはもってこいの晩。」
山越えして滝をやっとの思いで渡り、寺に眠る金蛇様を懐に入れ、もと来た道をすたこらさっさ。
ちょうど滝に差し掛かったときのこと。
来たときには無かった、太いきらきらした丸太橋があるではありませんか。
「これは都合がいい、一思いに渡ってしまおう」と、用心しながら丸太の真ん中まで来たときのことです。
ぐらりぐらりと揺れはじめ、前の方からぎらりと光る火の玉のようなものが近づいたと思ったその時、村人は大蛇の口に飲み込まれて
しまいました。
不思議なことに、金蛇様は、何事も無かったかのように寺に眠っていましたとさ。